桜蔭塾 第25回講座報告
東京農業大学生命科学部分子微生物学科 教授
戸塚 護 氏
腸内細菌・プロバイオティクスと健康
第25回桜蔭塾では、東京農業大学生命科学部分子微生物学科教授でかつてお茶大で非常勤講師を務められたこともある戸塚護先生をお迎えし、「腸内細菌・プロバイオティクスと健康~腸活のススメ~」と題してご講演いただきました。
会場とZoomのハイブリット配信で約60名が受講しました。
“ヨーグルト博士”とも呼ばれる先生のご専門「食品免疫学」をベースに、「腸の働きと腸内細菌叢(そう)~腸活とは~」「腸内細菌と健康」「プロバイオティクスとプレバイオティクス」について、3択クイズを交えたり図や資料を用いたり、一つ一つ親しみやすく丁寧にご説明くださいました。「健全な腸内細菌叢=腸内フローラは“善玉菌”が優勢、ただし“多様性”も大事。多くの種類の菌がいることが大事でそれぞれ役割があり協働している」にはハッとさせられました。また「腸内フローラはもう一つの臓器、しかも食べ物により自分で改変可能」は大変興味深いお話でした。
講演時間終了後も、会場では先生を囲んで受講者から次々質問が寄せられ、真摯にご回答されるご様子に感銘を受けました。時間を過ぎても和やかにお話が盛り上がっていたのも印象的で、ご参加の皆様の健康への関心の高さがうかがえた講演会となりました。
戸塚先生、本当にありがとうございました。
【メールによる質問】
腸内細菌と疾患との関連についての話がありましたが、必ずしも腸内細菌叢の偏りや異常が疾患の要因になるとは限らず、疾患に罹患することでそのような腸内細菌叢になることもあるのではないでしょうか。そのあたりについてはどのような知見が得られているのか、また先生はどのようにお考えか、お伺いできたらと思います。
【戸塚先生からの回答】
腸内細菌の状態と疾患の関係については、ご指摘の通り、現時点ではお互いの間に関連がある(相関関係がある)ことしか見ていない例が多いです。つまりどちらが原因なのか、結果なのか(因果関係)までわかっている例は多くありません。それを明らかにするためには(例えば動物試験などで)原因となる可能性のある菌(あるいは菌叢)を投与した場合にその疾患が生じるかどうかを調べたり、人の疾患の場合には、糞便微生物移植を行った場合にその疾患がよくなるかを見ることで因果関係を明らかにすることができます。
ある疾患に罹患することが原因となり腸内細菌叢の変化が生じる例については、逆の因果関係にあるものに比べて研究例は少ないです。というのも、腸内細菌をターゲットとした疾患の治療法の開発により注目が集まっているからです。一例としては、新型コロナウイルス感染症患者で腸内細菌叢に変化が生じたという例があります。以下のリンク先に詳細がありますので、ご興味があればご確認ください。
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00160.html
★受講者からの感想★
・年代によって腸内細菌の分布が変化すること、脳との関連が強く、神経とホルモンへの働きかけがあること、などたくさんの興味深いことをお聞きできました。
・腸内細菌については科学番組などで興味を持った事柄でしたので、その種類について詳しい解説をしていただいたのが興味深かったです。
・腸活とか菌活などとよく言われておりますが、実はもともと持っている菌を増やすことしか出来ない、新たな菌をこれから取り込むのは難しい、という事実はちょっと衝撃でした。
・細菌叢の個人差が大きいことに驚きました。自分の細菌叢を知ってそれに合った腸活ができればいいのにと思いました。
・今まで食事をきちんと採っていれば関係ないと思い、そのような食品には注意していませんでしたが、これからはもう少し着目してみてみようと思いました。
・腸が脳とつながる迷走神経というものがあり、気持ちや気分にまで関与していることに驚きました
・今回初めて参加しましたが、地方の自宅に居ながらにして専門的な講演を聴講することができ、大変有意義な休日を過ごすことができました。今後の健康維持の参考とさせていただきます。ありがとうございました。
・近年、体調を崩しがちでしたので、実際の食生活の中で、生かしていきたいと強く思いました。このような企画とお話し、大変ありがとうございました。
・わかりやすく興味深い講演で、早速腸活したくなりました。その日からすぐに実践してみようと思えるような内容のお話だったので、とても良かったです。
・皆様の関心が高いテーマを、わかりやすくご説明いただきました。メリハリのある展開で、最後まで興味深く拝聴することができました。ありがとうございました。
・図やイラストなど、非常に分かり易い資料を元にした講演で、興味深く拝聴できました。
思っていた以上に腸活が重要だとわかりました。健康増進を助けてくれる食品の数々が参考になりました。
・普段は素通りしてしまうことの多い分野ですが、興味深く拝聴しました。